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潜在性結核感染症とは!感染力はある?職場でもらったら労災?

 

結核の接触者健診についての記事を書いたところ、参考にしてくださっている方が少なからずいるので、この記事ではさらにちょっと踏み込んで、潜在性結核感染症(LTBI)についてお伝えしたいと思います。

 

潜在性結核感染症(LTBI)って何?

結核菌に感染しているけど発病していない状態のこと。よく誤解があるので明記しますが、この状態で感染力はありませんし、通学や通勤に制限がかかることはありません。

ただし、結核菌に感染はしているので、今後発病するリスクは他の人と比較すると高いのは事実。発病するリスクを抑えるために結核治療に使われる薬のうちの1種類を約半年間内服することが多いです。

 

潜在性結核感染症(LTBI)の診断のための検査

結核の接触者健診で使用される、IGRA検査(イグラ検査)という血液検査をすることでわかります。病院によって使っている検査は異なりますが、QFT検査(クォンティフェロン検査)かTスポット検査と言われたらIGRA検査のことです。

こちらの血液検査は結核菌に感染しているかどうかが分かる検査なので、結核を既に発病している人も陽性になります。

 

なので、IGRA検査で陽性だった場合は

  • 既に結核を発病しているのか
  • 感染だけして発病していないのか

ということを判断していくことになります。

 

結核を既に発病している場合は、レントゲンやCTを撮った時に肺に白い影が映ります。その場合は、痰や胃液の菌検査を実施するなどして、より詳しい検査をしていきます。

検査をしていく中で、痰や胃液などの中から結核菌が見つかったら、既に発病している状態ということになり治療が開始されます。また、菌が見つからなくても肺の陰影が結核に特徴的だ、と医師が判断した場合は「肺結核」として治療が開始されることもあります。

 

よって、IGRA検査は陽性だったけれど、症状もないし、レントゲン上も問題がない人は潜在性結核感染症というように診断されるのです。

 

※ちなみに、結核は肺に病巣を作るものが多いですが、リンパ節や骨、腸粘膜等様々なところに出来ます。今回の説明は肺結核と潜在性結核の区別を行うためのものです。

 

リウマチ治療やパルス療法前にもIGRA検査をすることがあるよ

IGRA検査は結核の感染を見つけるための検査です。結核に感染している人は、抵抗力や免疫力が下がった時に結核を発病しやすくなるので、強いステロイドや生物学的製剤を使用する前や抗癌剤治療を開始する前に、スクリーニング検査としてIGRA検査を実施して結核の感染の有無を確認することもあります。

そのような状況で結核の感染がわかったら、本命の治療の前に潜在性結核感染症の治療をすることもあります。

 

潜在性結核感染症になったらどうなるの?

前述の検査をして、潜在性結核感染症というように診断されたら、どのような流れになるのでしょうか。

順を追って説明します。

 

主治医と治療方針を話し合う

潜在性結核感染症と診断された場合、基本的には結核治療薬のうちの1種類(イスコチン)を半年間内服することになります。

ただし、結核の接触者健診経由で潜在性結核感染症がわかった場合は、発病しないかを定期的に確認していくだけの方法をとることもできます。その場合、最も発病のリスクが高いと言われている接触者健診を実施する元となった結核患者と最後に接触した時期からおおよそ2年後まで半年ごとに胸部エックス線検査を実施します。

薬を飲むのか飲まないかは、基本的に主治医と本人が決めることになっていますが、内服を勧められることがほとんどです。

 

主治医が発生届を保健所に提出する

周囲に感染させる恐れのない潜在性結核感染症ですが、診断をつけた主治医は感染症法に則って発生届を保健所に提出しなければなりません。発生届が受理されると、保健所の担当者から連絡が入ります。

 

保健所担当者と話をする

潜在性結核感染症も、結核と同じく公費を使って治療をすることが出来ます。

自治体で決められた申請書を提出する必要があるので、一度は保健所に出向くことがほとんどです。保健所に行くことが難しい場合は、保健所の担当者が訪問にくるケースもあります。なお、労災として治療する場合は公費を使わないことが多いですので、別の流れになります。

また、薬を毎日飲めているのかを保健所が把握する必要があり、服薬支援者を必ず一人は立てなければなりません。一人暮らしの人などは、保健所の職員が服薬支援者となります。

 

内服開始

概ね6ヶ月間にわたり、毎日薬を飲まなけれななりません。

下手に飲んだり飲まなかったりすると、結核菌が薬に対して耐性をつけてしまうことがあります。潜在性結核感染症の人が体の中で耐性のある結核菌を育ててしまうと、その人が発病した際に使用できる薬が減ってしまうことはもちろん、その人から感染した人も使える薬が少ない状況を作ってしまいます。

薬剤耐性のない結核は、よっぽどひどい状態で見つからない限り問題なく治りますが、多数の抗結核薬に対して耐性をもった結核は未だに致死率は高いままです。

 

内服終了後 管理検診

こちらは必要がある場合とない場合があります。基本的には主治医の判断で、そこに保健所判断も乗っかってくるイメージです。

主治医は管理検診不要と考えた場合でも、元の患者の感染力がとても強かった場合などは管理検診が必要であると保健所が判断することもあります。

管理検診が必要となると、内服終了後から2年間半年ごとのレントゲン検査を実施することになります。

 

職場で行った接触者健診で陽性だと労災認定?

たとえばあなたが医療従事者だったり、介護職員だったりして、職場で結核の患者さんや利用者さんを対応して結核の感染がわかった場合、職場をそれを労災認定してくれるのでしょうか。

労災認定になるかについて決定するのは職場であり、保健所や国が労災認定を決定することはありません。

 

労災として認定されるのかは本当にケースバイケースなところがあるので、「労災になる」「労災にならない」とは残念ながら断言できないのが正直なはなし。しかし、比較的大きな組織であれば、労災認定されることが多いように思います。

 

労災認定になったら?

職場で実施した接触者健診で陽性が判明した場合、そして労災に認定された場合、

  • 治療や検査等に関わる費用をすべて職場が負担する
  • 公費負担を使用した上で、自己負担分を職場が負担する

この2通りになるのが通常。ちなみに、公費負担と労災の併用は病院側での事務手続きが煩雑になることからレアなケースではあります。

 

公費負担を一切使用しない場合は、保健所での手続きは不要となりますが、前述した「服薬支援者」は決めなければなりませんし、潜在性結核感染症患者として、登録はされるので保健所と関わりを持たなくて良いわけではありません。

薬を適切に飲みきれているかを確認することは保健所の仕事になっているので、公費を使用しなくても担当者はつきます。

 

まとめ

 

 

日本の結核患者のほとんどは高齢者です。

戦前戦後の、結核が蔓延していた時代を生きてきた結核菌に昔感染していた方々が歳をとり、抵抗力が低下したところで発病するケースが多いのです。そのような方々が発病する場所は、施設であったり、病院であったり、自宅で生活されている方であっても通所のデイサービスを利用していることがほとんど。

おのずと、医療職や介護・福祉職の人たちは結核の接触者健診を受ける事になる可能性は高くなり、他職種と比較すると結核は比較的身近な存在であったりするかと思います。

 

しかし、忘れてはならないのがもしも職場の接触者健診で陽性になってしまったとしても、職場で対応した結核患者から感染したのかどうか、因果関係をはっきりさせるのは難しいということ。

 

日本の結核有病率は年々減少してはいるものの、諸先進国と比較すると依然として高く、高蔓延国、中蔓延国、低蔓延国の3グレードに分けると中蔓延国に分類されます。

ですので、職場で結核患者さんがいたから、たまたま接触者健診の対象となって、たまたま感染していることが分かるケースもあり、自分自身が感染した元の患者さんは全然別の人という可能性もあるのです。

 

仮に「感染」ではなく、「発病」にまで至っていた場合はVNTR検査という結核菌の遺伝子型検査をすることによって、同一の結核菌株による発病かどうかを調べることはできますが、そこまでの詳しい検査は主に国のサーベイランス目的で実施されているので、一般に知らされることは基本的にありません。

 

「誰からうつされたのか」は気になるところではりますが、その時点で自分にできることは変わらないので、実施するべき検査を適切な時期に受けて、必要であれば治療を受けるということを徹底することをおすすめします。

 

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